ごあいさつ NPO法人国際CIO学会理事長 岩崎 尚子(早稲田大学電子政府・自治体研究所教授)平素より当学会の研究教育活動に御参加,御支援を賜り衷心より感謝申し上げます. 2024年度は3月の年次総会に始まり,11月にタイの首都バンコクで開催された国際CIO学会世界連合年次総会,そして2025年3月の国内年次総会と大きなイベントが目白押しでした. 特にその中でも生成AIとその周辺技術やサービスに関心が集中しました.さらにAIエージェントの進化によって,社会全体が大きな変化を遂げようとしています.「AIエージェント元年」とも呼ばれ,企業や政府は生成AIを活用した新しいサービスや業務改革を推進しています.これらは自律的に意思決定を行い,複雑な業務を遂行できるテクノロジーであり,様々な分野で取り組みが始まっています.さらに汎用人口知能といわれるAGIは,AIが生産性を飛躍的に向上させ,モノやサービスのコストを限りなくゼロに近づける未来の到来ともいわれ,労働の代替,資源の希少性の低下等も指摘される社会も目前に迫っています. 企業のみならず,行政分野でも同様の動きがみられます.特に日本は人口減少,少子,超高齢社会といわれるだけに,AIがもたらす効率的且つ生産性の高い社会の構築に期待がもたれつつも,倫理・法的枠組みや,労働市場の対応が求められます. 2024年にスタートして19年目を迎えた世界デジタル政府ランキング調査では,AIなどの技術活用に積極的な中位国が上位にランクインしてきている傾向が顕著でした.これは昨今の特徴ともいえますが,中東産油国のサウジアラビアやASEANではシンガポールに次ぐ第2のデジタル先進国としての仲間入りを果たしてきたタイ等,デジタル政府の進捗度は出色です. 残念ながら,日本は2023年のランキングに引き続き10位圏外となりましたが,国連,OECD,IMDなどの国際的評価で日本のランキングが依然として振るわない点は,前年同様に改善が求められるところです.特にデジタル化を推進する上で要となる関連人材不足は深刻な課題となっています.「2025年の崖」をいよいよ迎え,人材育成や内製化はもちろん,外国人材の獲得競争やオフショアの活用等,人材不足は2025年問題といえるでしょう. ICT人材やCIO育成の必要性が叫ばれて20年を経て,今では新しいテクノロジー,サービス,アプリケーションが席巻しています.AIとの本格的な共生社会の構築を目指して,日本社会だけでなく,国際社会の課題やSDGsも含めた日本のデジタル分野の対応はより求められるでしょう.日本の強みである信頼性の高い社会構造を活かし,いかに国際貢献が出来るのか. 当学会は世界各国・地域に支部を持ち,デジタル分野の課題解決に力を入れて参りましたが,当学会のネットワークを通して,アカデミアの立場からデジタル分野に関しての政策提言を対外的に発信して参りたいと思います. NPO法人国際CIO学会は2025年に設立20周年を迎えました.2026年3月に20周年を記念しての祝賀イベントの開催も予定しております. 今後もNPO法人として,目的と使命を果たせるよう,そして国内外で喫緊の社会課題に対するグローバルな貢献を会員の皆様や当学会の世界連合組織とも共創しながら,デジタル社会の発展の礎となる人材育成を続けてまいりたいと思います. 今後とも御支援御協力を賜ります様お願い申し上げます. |
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